介護関係のツイートなどで時々目にして気になっていたのが、ユマニチュードという言葉。
図書館でこのユマニチュードを紹介する『「ユマニチュード」という革命』という本を借りて読んでみたら、介護に関する気づきとヒントに満ちたスゴイ本だったのでブログでご紹介します。
ユマニチュードというのは本来、プロの介護士の方向けの介護メソッドなのですが、親の介護(特に認知症)で悩んでいる家族の方にもぜひおすすめしたい一冊でした。
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ユマニチュードというのは、フランスで開発された認知症高齢者に対する介護メソッドの名称です。
フランス人のイブさんとロゼットさんという方が、介護の現場で色々な試行錯誤を重ねた上で上手くいった方法を体系化したもので、メソッド自体を簡単にまとめると以下のようになります。
【ユマニチュードの4つの柱】
生物学的にこの世に生まれてきた赤ちゃんを、人間社会に迎え入れる方法。人間の世界との絆が薄れている認知症高齢者を、これらの方法でもう一度人間社会に呼び戻す。
見る | 「近くから、水平に、正面から、長い間、瞳と瞳を合わせる」という見方が、ポジティブさ、愛情を表現する |
話す | 穏やかに、ゆっくり、前向きな言葉で話しかける |
触れる | 広い面積で、柔らかく、ゆっくり触れることで、優しさ、愛情を表現する |
立つ(立たせる) | 立って歩くことは知性の根幹であり、人間であることの尊厳を自覚する手段でもある。また健康にもとても良い |
(『「ユマニチュード」という革命』185ページを元に作成)
確かに赤ちゃんに接する時って、自然と上のような接し方になりますよね。
「赤ちゃんが立てるようになる」というコトに対しても、両親をはじめ周囲の人間もものすごく関心を寄せますし。
【すべてのケアを構成させる5つのステップ】
認知症高齢者と人間関係をつくるためのケアの手順
出会いの準備 | 来訪を伝える(ノックをして返事を待つ) |
ケアの準備 | 相手との関係性を築く(「あなたに会いに来た」というメッセージをまず伝える) |
知覚の連結 | 心地よいケアの実施(「あなたを大切に思っている」というメッセージを継続的に届ける) |
感情の固定 | ケアの心地よさを相手の記憶に残す(「一緒に過ごせて嬉しかった」といったポジティブな声掛け) |
再開の約束 | 次回のケアを容易にするための準備(自分に優しくしてくれた人がまた会いに来てくれるという喜びや期待の感情は記憶にとどまる) |
(『「ユマニチュード」という革命』242ページを元に作成)
「忙しくて5つもやっていられない(≧ε≦;)」
と思う方も多いかと思いますが、それぞれのステップに掛ける時間はごく短時間で良く、またこれらのステップを踏むことによって、次回のケアがしやすくなるそうです。
この本の中で特にハッとさせられたのが以下の部分です。
ケアをはじめたのは修道院でした。担い手は修道女で、彼女たちは身寄りのない人、病人といった誰も世話をしたがらなかった人たちのケアをしていました。(中略)宗教者によってつくられたため、ケアの本質はあくまで奉仕です。(中略)
だから、自分から与えはしても相手からは何も受け取りません。(中略)
近代的な看護は欧米から世界に伝えられ、その根っこにはやはりキリスト教の犠牲の精神があります。(中略)
苦難なくしてケアはありえないという考えで築かれた文化が、無意識のうちに個人に自己犠牲を迫り、それに慣れていくうちに、個人が自由に考え、行動する力を失っていくのです。
(『「ユマニチュード」という革命』63〜66ページより抜粋引用)
今まで看護師さんや介護福祉士さんたちに対して、言葉にこそしないものの心の中で
(凄いなぁ〜。偉いなぁ〜)
(自分にはとても出来そうにないなぁ・・・)
とよく思っていたのですが、これって無意識のうちに看護師さんや介護福祉士さん達に対して自己犠牲を期待していたからこそ
(私はそんな自己犠牲を払うことは出来ない)
と考えていたことに気づいて、思わず本を置いて
「う〜ん・・・」
と反省(?)してしまいました。
皆さんは、上の抜粋引用の部分を読んでどのように感じましたか?
介護する側から見ると
『自分から与えはしても相手からは何も受け取りません』
というのは確かによくある心理状況だと思いますが、ユマニチュードにおいては介護する側も相手から多くのものを受け取り、それをエネルギーとして次のケアにつなげていきます。
具体的に「どのようにして要介護者から多くのものを受け取るか?」については、ブログでは書ききれないので、ぜひ本書をチェックしてみてください。
ここまで読んで、おそらく
「なんだか話がうますぎる」
「認知症の介護はそんな単純なものではない」
と思った方も中にはいらっしゃるだろうと思いますが、著者自身も
『ユマニチュードは魔法でも奇跡でもありません(7ページ)』
『容易なことではありませんし、すべての人が(人間の絆の中に)戻ってくるわけではありません(222ページ)』
と本の中で言っています。
また、このユマニチュードの技術を正しく身につけるためには多くの知識とトレーニングが必要です。
なので、この『「ユマニチュード」という革命』という本を読んだからといって、いま認知症で苦しんでいるすべての人の悩みが100%解決出来るわけではありません。
ですが少なくとも私は、この本から多くの気付きとヒントを得ることが出来ました。
タイトルにもなっている「革命」という言葉は、決して大げさではありません。
確かにこれは「革命」だと思いました。
介護士の方だけでなく、高齢の親を持つ私と同世代(40代)の方にもぜひ読んでいただきたい一冊です。
以上
親の介護に悩む人必読!『「ユマニチュード」という革命』という本がスゴかった
でした。
月並みな表現で恐縮なのですが、騙されたと思ってぜひ一度読んでみてください!
目カラ鱗ガポロポロ落チタゾ☆