もの盗られ妄想を抱きやすい2つの性格パターンとは!?『痴呆を生きるということ』読書メモ

実家の両親を遠距離介護していることもあり、Twitterではたくさんの介護関係の方をフォローさせていただいています。

そんな私のタイムラインでよく見かけるのが、認知症の方の「もの盗られ妄想」に関する悩み
皆さん、苦労されているようです・・・(汗)
(「もの盗られ妄想って何?」という方はそもそもこの記事を読まないと思うのですが、念のために「もの盗られ妄想」に関して詳しく知りたい方はコチラをどうぞ。→至誠ホーム2.物盗られ妄想(pdf)

で、先日読んだ本の中で、そんな「もの盗られ妄想」に関する非常に興味深い記述を見つけたので、ブログでシェアしたいと思います。

本のタイトルは『痴呆を生きるということ』
◆amazonリンク→『痴呆を生きるということ』

認知症介護について、今までとちょっと違う見方を提供してくれる一冊です。

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性格パターンその1「面倒見はよいが面倒見られが下手」

著者の小澤勲(おざわいさお)さんという方は、精神科医として長年認知症の患者とその家族に数多く接してきました。
そんな小澤先生いわく、もの盗られ妄想を抱きやすい認知症患者には、2つの性格パターンがあるそうです。

まず1つ目の性格パターンは「面倒見はよいが面倒見られが下手」

具体的には
・几帳面
・律儀
・仕事熱心
・徹底的
・頑固
・勝ち気
・負けず嫌い
といった性格で、これら全体をひっくるめた人柄を小澤先生は「面倒見はよいが面倒見られが下手」と表現しています。

読んでいて「なるほど!」と思わず膝を打った部分を、本書より少し引用させていただきます。

彼らは、私の造語だが、「面倒見はよいが、面倒見られが下手」な人たちである。面倒見のよい人は、人の面倒を見ることを生きがいにしてきただけに、面倒を見られる側に回ることは生きがいを失うことを意味するばかりか、えてして屈辱と感じるものである。このような事態は彼らにとって、あまりに受けいれがたい。
『痴呆を生きるということ』(Kindle の位置No.1256-1258)

(前略)彼らにとってこれからの人生は「一方的に面倒を見られ続ける」時間になる。その時間のなかで彼らは弱者になり、世話してくれるだろう相手は強者になる。彼らは、人と人とのあいだ柄をヒエラルキーで、つまりは上下関係として捉えがちである。「耐えられない」と彼らは思う。「こともあろうに、嫁の配下に身を置くことになるなんて」。このような思いが介護者への攻撃性に転化するのは、ほんのあと一歩である。
『痴呆を生きるということ』(Kindle の位置No.1266-1270)

いかがでしょうか?
「もの盗られ妄想」というのは、介護する側からすると非常に理不尽な症状なワケですが、こんな風に説明されると少し納得出来る部分もあると思えてきませんか?

ちなみに、小澤先生によると「もの盗られ妄想」のほとんどは、この「面倒見はよいが面倒見られが下手」のパターンだそうです。

性格パターンその2「面倒見も悪いが面倒見られも悪い」

2つ目の性格パターンは「面倒見も悪いが面倒見られも悪い」というもの。

具体的には
・変人
・風変わりな人
・わがまま
・自己中心的
・自分勝手
といった性格で、小澤先生の表現を借りると『周囲が当然のこととして彼らに期待する役割を担うことなく生涯を過ごしてきた人たち』です。

ここでも、本書から少し引用させていただきます。

しかし、「役割に生きてきた人」にあっては社会的秩序のなかで自らが劣位に置かれることが問題であったのに対して、この性格類型では面倒を見られるという立場に置かれることによって社会秩序に組みこまれ、生涯保ち続けてきた対人的距離が崩壊する予感が危機を招き寄せるのである。
『痴呆を生きるということ』(Kindle の位置No.1311-1313)

(注:ここでの「役割に生きてきた人」というのは、1つめの性格パターン「面倒見はよいが面倒見られが下手」のことを指します)

上記の引用部分を読んで、私はテレビの情報番組などに登場する、いわゆる「ゴミ屋敷」の人を思い出しました。
認知症の人と一緒にして良いのかどうかは分かりませんが、敷地内に入ってくる人に対してものすごく攻撃的になる面など、ちょっと「もの盗られ妄想」と似ている部分があるのかな〜と。

皆さんはどう思われますか?

「痴呆」という言葉を毛嫌いせずにぜひ読んで欲しい一冊

さて、では肝心の
「もの盗られ妄想にどう対処すればいいのか?」
についてですが、これについては『痴呆を生きるということ』の
・第五章 痴呆のケア
   2 周辺症状のケアーもの盗られ妄想を例に

の中で解説されているので、ぜひ本書を手にとって自分の目で確かめてみてください。

『痴呆を生きるということ』は、「痴呆」という言葉のインパクトがかなり強いので、介護者にとっては読み始めるのに少し抵抗感があるかもしれません。
(参考リンク→「痴呆」に替わる用語に関する検討会報告書(厚生労働省)

ですが、内容は侮蔑的(ぶべつてき)なものでは決してなく、むしろ認知症患者に対する畏敬の念がそこかしこに散りばめられています。

特に「最終章 生命の海」などは、著者の小澤先生が長年の認知症患者との関わり合いの末にたどり着いた「悟りの境地」とでも言うべき記述で、なんというか・・・圧巻の一言です。

まとめ

以上
もの盗られ妄想を抱きやすい2つの性格パターンとは!?『痴呆を生きるということ』読書メモ
でした!

親の介護に関しては、本からとても沢山のことを学んでいます。
以下、おすすめの本を記事にしていますので、気になるものがあったらぜひチェックしてみてください。

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それでは介護仲間の皆さま、これからも頑張りすぎず、でも頑張っていきましょう!


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